本当にクライアントに喜ばれるもの

ふと思い出したエピソードなのですが、私は昔、ある専門学校ではないがその道ではちょっとしたプロも養成するような音楽学校に通っていたことがありました。
そのときはソフトウェア開発の仕事がいやになっていて現実逃避したかったときでもありました。
そんなことはさておいて、その学校であるときにプロの作曲家・アレンジャーである羽毛田丈史さんのセミナーがありました。
そのときの話は有名企業のシャンプーのCMを題材に作曲とアレンジの実際についてお話されていました。
CMの曲が最終バージョンにいたるまでの仮定を絵コンテの資料を交えての話で、自分の知らない現場の世界の話が聞けて、リアリティーもあってとても面白い内容でした。
セミナーの最後に質問の時間があって、そのときにある人が次のような質問しました。

「クライアントに納得してもらうものを作るにはどのようにすればよいのでしょうか?」

非常に難しい質問だなと思ったと同時にその道で百戦錬磨のプロ中のプロである講師にする質問としてよい質問だと思いました。
質問者としては何かテクニックのようなものを教えてもらえるかと期待したのではないかと思いますが、そのときの答えは次のようなものでした。

「なかなか良い質問ですね。クライアントの話を良く聞いてクライアントの言うとおりのものを持って行っても『イメージどおりなんだけど、、、』と言って納得してもらえません。クライアントの納得したものにするには言われたこととちょっと違った風にしてよい意味で期待を裏切らなければなりません。」

これだけを言い切ってそれ以外の細かい話が一切無かった回答は、予想通りといえばそうなのですがそれでも自分の中ではインパクトのあるもでした。
商業音楽のプロ中のプロとはそういうものなのかと感心しました。
同時に小手先のテクニックでどうこうできるものでもないことを理解しました。


クライアントに喜んでもらうってことは本当に大変なことなのですね。